つづいて、kanryo氏のお答え。

なお、kanryo氏は「一般論として」この問題に対する見解を述べられております。

> 中央が権限を保持したいと考えているのが確かだとしたら、それはどのような理由によるのか?また、権限を維持する事によってどのような利益があるのか?

これについては、権限維持・拡大は官僚の本能である、と言ってもいいと思います。「組織の拡大」とか「予算の拡大」と言い換えることもできます。権限とは法律上の命令権等だけでなく、予算の執行に関する裁量も含むものですから。
なぜ権限拡大が役人の本能になるのかについては、行政学の分野でいろいろ語られています。…といいつつ行政学で語られていた内容を思い出すことができないのですが、役人は民間企業と違って「業績」による評価が非常に厳しく、結局のところ「予算」や「組織」の拡大でしかそれを示すことができないように思います。「権限」はそれらの裏付けとなるものです。すなわちこの仕事をする権限があるから予算と組織が必要である、という風に。

もうひとつとして、外部(マスコミや政治家)からの批判を避けるためだと思います。規制緩和を叫びながら規制緩和によって問題が発生するとすぐ中央官庁を批判する人が結構いますが、結局のところこの国では何か問題があるとすぐ中央官庁のせいにされます。
三位一体改革を推進すべしと主張する人が、将来その改革のために何か問題が起きても、決して応援してはくれないだろうと個人的には思います。問題が起きたとき、今の総理や大臣はその椅子にはいません。「いやあのときは政治判断でそうなりましたから」と役所が主張しても、「しかしそのときは役所も納得したんだろうが」と批判されて終わりです。我々役人は、そのような状況を見続けてきました。
だからおいそれと権限を手放せない。問題があってそれを解決しようと思ったら、権限がなければできないからです。

各省庁は、kujo-qtaro様ご指摘の「行政の効率性」「不均衡の是正」「政策立案・遂行能力への不信」という考え方を持っており、それらを根拠にして三位一体の改革に反対しています(まぁ能力への不信は表だっては言いませんが…)。もちろんそれらは合理的な根拠であり、国全体をどうやったらよくしていけるかという役人の理想や使命感から出てくる考え方ではあります(その「理想」や「方法論」が異なるから議論が発生するわけで)。
しかし、前述した役人の本能としての権限維持・拡大ということがあるのもまた事実であり、話がややこしくなります。さらに言うと、「自分たちの組織の権限が維持・拡大されることが日本のためである」という考え方もあったりします。これは一概に否定できるものではありません。

というわけで、権限維持に何らかの利益があるか、といわれれば、それ自体が役人(役所)にとっての「自己目的的な」利益でもあるし、「国益」でもある、と言えます。国益が何か、というのは大問題ですが…。

私は、この三位一体改革に関して言えば、問題になっている政策ごとに是々非々で判断する必要があると思います。かつて細川総理が言っていた「バスの停留所を30メートル動かすのに運輸大臣の許可がいる」なんてことは論外ですが、しかし現在の議論についていえば、地方分権・財源移譲すれば話がすむような問題はないように思います。
是々非々の議論ができなければ、それこそもっと根元的な議論、例えば国と地方の役割分担を根元的に見直し、中央の役割は外交・防衛・県境を跨いだ問題の解決ぐらいに絞るぐらいの議論をしなければいけないように思います。そして、そのような議論は政治的に現実的ではありませんし、実行するのが合理的とは思えません。

なんだかぐだぐだな文章になってしまいました。結論としては、役所には権限を維持・拡大するインセンティブがある、それは必ずしも悪いものではない、三位一体改革を一概に論ずることは難しい、ということです。ご参考になれば幸いです。