市場はダメ?

「市場の失敗」という言葉があります。簡単に言えば、市場に任せておくと、財の最適供給が達成されない状況をさします。*1
で、ここで重要なのは、「市場の失敗」というのは、市場は基本的には有効に機能しているという前提があった上での話だということです。
けど、資本主義とか市場が嫌いな人はだいたい、この話を、「市場の失敗」ではなく「市場は失敗」なのだという風に捉えてしまうようでして。いやぁ、こりゃこまった。なんせ、「市場は失敗」ですよ(笑)つまり、「市場ってのは基本的に悪」ってことになるんですよ。
そりゃあまぁ、貧困とか、貧富の格差とかあるでしょうが、それは、市場が有している価格メカニズムが悪いからそうなっているわけじゃあないんですよ。
価格メカニズムによって需要と供給が調整されるからこそ、ある個人の労働力としての価値(労働賃金)が決まるわけでして、この価格メカニズムがなければ労働市場での円滑な賃金設定もままならないのです。
そうすると、どうなるか?市場は混乱してしまうでしょう。市場がなければ、われわれが現在行っている経済活動はほとんど有効に機能しなくなるのにもかかわらず、「市場=悪」という直感的で浅い認識を持ってる人たちって、結構多いんでしょうね。

補足

一部の方からは、市場メカニズムによって労働者の賃金が決定されることに対して、「市場は人間の価値を決めつけるのか!!ふざけんな!!」という、心理的には理解できてもまったく的外れなお叱りを受けそうですね。そういう方には、労働者としての価値を賃金という形で決めないのであれば、どうするのか?ということを聞いてみたいものです。
重要なのは、賃金を決めるということは、人間の価値を決めることとは違うという点です。たとえば、その個人がどれだけ人徳があってすばらしい人間であっても、(逆に、くそみたいな人間であっても、)その人間が供給できる労働の価値が同じなら賃金は同じわけです。給料なんて労働の対価でしかないんですから。だから、労働者としての価値というのは、人間としての価値とは異なるのですよ。

*1:たとえば、財の供給量が少なすぎたりとかですね。でもって、さらに簡単にいえば、市場に任せておくと起きる問題(公害とか、環境問題とか)のことを市場の失敗と呼ぶと考えていただければよいかと。貧困問題は「市場の失敗」の問題だとは言い切れませんのでご注意を。