自民と民主のネット上での選挙活動に関するやりとりについて(長いよ)

やっぱ公職選挙法の規制って、いろいろと面倒ですね。現在の状況はこんな感じ→衆院選 ネット利用で神経戦 自民、民主両党
要するに、自民側が総務省民主党のサイトとかに問題があると指摘して、それを受けて総務省民主党に注意をした。で、民主党は指摘に従ったが、従来は問題視されていなかったはずのネット上での活動が、今回いきなり注意を受ける事になって不服だと。で、質問状を総務省に送付したと。

民主党の言い分

党のサイトにメルマガのバックナンバーを読める項目はあるのだが、公示日以降のものは公開されていない様子。ということで、選挙活動に該当しそうな箇所以外を、ほぼ全文引用する。

   民主党メールマガジンDP-MAIL 読者のみなさまへ


このメールマガジンの発行について、本日、「選挙運動に使用する文書図画の配布を規制する公職選挙法(以下公選法と略)第142条に抵触している」との指摘がありました。

公選法にはインターネット使用については明確な禁止規定はありません。総務省が1996年に新党さきがけの質問状に答え、示した見解により、公示後のホームページ更新やメールマガジン配信などについて、規制が行われているのが実情です。


公選法上の「選挙運動」とは、(1)特定の選挙において(2)特定の候補者を当選させるために(3)有権者に働きかける行為、の3つの要素を指しています。

メールマガジンは、登録した読者だけに送信されるもので、不特定多数への頒布にはあたらないものと従来は判断され、民主党としても、選挙公示後は、「選挙運動」にあたる文言を記事からいっさいはずして、通常の政治活動の一環として、党の政策やそれに関わる情報、幹部の日程などをお知らせしてきました。

これまでは、民主党のみならず自民党を始め各党がこうした形で関係記事を掲載してきており、自民党も4月の補欠選挙、6月の東京都議選でも同種の記事を掲載しております。

我が党も、前回の総選挙、昨年の参院選、また今年4月の衆院補欠選挙や6月の東京都議会議員選挙においても、上記の考え方を遵守しながら、ウェブサイトやメールマガジンで情報提供を行っておりましたが、当局からの違反との指摘や指導は全くありませんでした。
 
ところが、今回、総務省において突然、公選法の解釈変更が行われ、かつ、そのことが関係者に事前説明のないままに、まさに、不意打ちの形で違反との指摘が我が党になされたことは、きわめて不当であり、誠に遺憾です。民主党は、直ちに、なぜこのような解釈変更が行われたのか?また、その変更がなぜ事前に告知されなかったのか?などの点について、本日、枝野幸男幹事長代理名で、総務省に対して質問状を提出いたしました。現在、その回答を求めているところです。
 
民主主義の根幹である選挙のルール規定について、担当省庁の担当課が恣意的に解釈変更を不意打ちにより行なうという暴挙は、断じてあってはなりません。

民主党は、従来より、インターネットの選挙への利用について、透明で明確な明文による法定化を求めてきましたが、常に与党によって、阻まれてきました。まさに今回、その問題点が明らかになりましたが、我が国の民主主義にたいする重大な問題が発生いたしております。

当面の対応といたしましては、総務省から質問への回答が示されるまで、民主党メールマガジンDP-MAILは当分の間、発行を差し控えることにいたしますので、ご了承くださいますようお願いいたします。


民主党国民運動委員会 メールマガジン担当

<参考資料:公開質問状>
2005年9月1日
総務省選挙部長 様
                        民主党本部
                        幹事長代理 枝野 幸男

政党HP上における選挙関係情報の掲載等について

総務省関係行政へのご精励に感謝致します。

 さて、過日の8月30日に、総務省選挙課長より当方の事務局宛てに、民主党本部掲載のHPに公選法142および146条に違反するとの指摘・指導が行われました。この件につき、下記の質問にお答えいただくよう、要請いたします。


                  記


1 当方のHP上の記事内容について、公選法違反の指摘がありましたが、同様の選挙関係に係る記事掲載は、4月に実施された統一補欠選挙の際にも掲載しましたが、全く指摘・指導はありませんでした。

 加えて、こうした選挙関係記事は、民主党のみならず、自民党を始め各党が掲載していた事実があり、それが改めて指摘・指導されるに至った経緯、その間に公選法解釈の変更された理由、その解釈変更が関係者に告知されなかった理由、詳細をお知らせ下さい。

 例えば、自民党は、4月の統一国政補欠選挙の際に、別紙のように、同種の記事を掲載していましたし、6月の東京都議会議員選挙についても、同種の記事を掲載していました。これらに関する見解もあわせて、文書にてお知らせ下さい。


2 衆議院選挙期間中の政党代表等の記事の党本部への事掲載については公選法違反の指摘を受けましたが、例えば、党本部のHP以外では、現在も掲載されている、自民党広報本部本部長代理及び自民党遊説局長のブログなど、小泉総理の遊説に関する記事が選挙期間中も掲載されています。また、自民党東京都連のHP、TOKYO自民党BBSには、特定候補者に関する投票呼びかけに類する記事も掲載されていますが、これらについては、掲載が許される根拠についても、文書にてお知らせ下さい。

問題の条文

公職選挙法 第百四十二条(文書図画の頒布)

衆議院比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及び第一号から第二号までに規定するビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。


同法第百四十三条  (文書図画の掲示

選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの・・・(省略)・・・のほかは、掲示することができない。
2  選挙運動のために、アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類を掲示する行為は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。

問題の解釈(関連箇所のみ引用)

公職選挙法とインターネットに関する回答願


インターネットのホームページは、その性質上、候補者の経歴や政治信条、公約などをきめ細かく低廉かつ広範に提供できるだけでなく、有権者が自ら求める「候補者情報」をいつでも必要に応じて入手可能とするメディアである。

投票率が低迷している現状を踏まえ、有権者の選挙への関心を高めるためにも、選挙情報、候補者情報の流通手段の多様化が不可欠であり、ホームページはこの観点から極めて有効であると思われる。この点についての自治省の見解を伺うとともに、以下の各項目について回答を願いたい。


A.インターネット上のホームページの開設と公職選挙法との関係について


インターネットのホームページは、1極めて低廉な費用で開設・維持できる、2(1)電子的記憶としてサーバー上に保持されるものであり、通常の「文書図画」とは異なっている、(2)通常のビラ・ポスターの場合と異なり、相手方からアクセスして利用するものであり、候補者等の側が積極的に「頒布」または「掲示」するものではないという特質を有している。以下、各点について回答を願いたい。

2.(構成要件該当性)
  a)「文書図画」
 公職選挙法142条・143条は、選挙運動用の「文書図画」を規制している。ところで、インターネットのホームページは電子的記憶としてサーバー上に保持されるものであり、通常の「文書図画」とは常識的には異なっていると考える。同法の「文書図画」に当たるのか否か、当たるとすればその理由は何か。
 あるいは、同法143条2項で規制している「アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類」に当たるのか否か、当たるとすればその理由は何か。

  b)「頒布・掲示
 公職選挙法142条・143条が規制しているのは、選挙運動用の文書図画の「頒布・掲示」である。仮にインターネットのホームページが「文書図画」に当たるとしても、通常のビラ、ポスターの場合と異なり、相手方からアクセスして利用するものでり、候補者などの側が積極的に「頒布」又は「掲示」しているものではない。「頒布・掲示」に当たるか否か、当たるとすればその理由は何か。


B.具体例
選挙期間中、以下の事例はそれぞれ公職選挙法違反となるか。


3.その他
c)電子メールによる投票依頼。
h)インターネット上の情報開示行為は、公選法142条1項の「散布」に該当するか。
i)インターネット上の情報開示行為は、公選法151条の5の「放送」に該当するか。

公職選挙法とインターネットに関する回答

Aの2(a)
 公職選挙法の「文書図画」とは、文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示をいい、スライド、映画、ネオンサイン等もすべて含まれます。したがって、パソコンのディスプレーに表示された文字等は、公職選挙法の「文書図画」に当たります。


Aの2(b)
 公職選挙法の「頒布」とは、不特定又は多数人に文書図画を配布することをいい、従来より、文書図画を置き、自由に持ち帰らせることを期待するような相手方の行為を伴う方法による場合も「頒布」に当たると解しております。また、「掲示」とは、文書図画を一定の場所に掲げ、人に見えるようにすることのすべてをいいます。したがって、パソコンのディスプレーに表示された文字等を一定の場所に掲げ、人に見えるようにすることは「掲示」に、不特定又は多数の方の利用を期待してインターネットのホームページを開設することは「頒布」にあたると解しております。


B 具体的事案については時期、態様により判断すべきでありますので、一般論として回答させていただきます。また、3については、
c 投票依頼であれば、選挙運動に当たります。
h 「散布」には当たりません。
i 一般的には、「放送」には当たらないと考えています。

コメント

以上。私はおおむね民主党に同意です。こういう規制を行うときには、事前に予見できないとですからね。事後になっていきなり「あれはまずい可能性が高いからやめといて」っていうのは行政の規制のあり方として、厳しいでしょう。けど、民主党は「今回は仕方ないから我慢しておこう」という事になりそうな気がしますが。