最近読んだ本(「こころ」が好きな人ってやーね)

久しぶりに本の話。紹介するのはいずれも,“行動分析学”という,徹底的行動主義に基づく心理学でござんす。開祖はスキナーって人で,この行動分析学ってのは,一般にイメージされるような「心理学」とは,性質がまったく異なります。
おそらく,「心理学」って聞いたら,フロイトユングを思い浮かべる人が多いと思います(精神分析とか臨床心理学とかのイメージね)。けど,行動分析学は,人の行動の原因を「こころ」に求めるのではありません。“無意識”だの“自我”だのといった,その言葉の定義や解釈を論じるだけで飯を食ってる連中がやってるような「心理学」とは全く異なります。
というのも,行動分析学では,人や動物が起こした行動の原因は,それを行った主体の意識や性格にあるとは考えないのです。例えば,部屋のカギを開けるのに,わざわざ「鍵を開けなきゃ」って考えてから行動してますか?そうでもないでしょう?
まぁとにかく,どっかのお子様がいろいろと問題行動を起こしたとしても,その原因は「こころが病んでいるから」ではなく,そいつの行動を引き起こすだけの環境要因があるという見方をとる学問なのです。*1
で,本題に戻ると,『パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学』が,行動分析学に入るきっかけとしては最良かなぁと。内容的には,いわゆる「教科書」という雰囲気ではなくて,もはやビジネス書みたいな内容です。実際この本では,職場とかの一般社会でありがちな問題に対する解決方法を,行動分析学を用いて答えてくれています。社会人にこそお勧め。
で,『パフォーマンス…』を読んだら,次に『行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)』を読むのがよろしいかと。この本は,『行動分析学入門』っていう教科書の新書版みたいな位置づけです。文章スタイルは集英社新書の方がかなり教科書っぽいですが。後者二つは,行動分析学の学問的な面に興味がわいてきたら読むとよろしいかと。
とりあえず,紹介はここまで。最後に理解の手助けとして一部新書から引用。

たとえ,機能的MRI*2によって特定の行動に対応する脳の活動が同定できたとしても,それはあくまで「行動がどのようにして発現するか」を説明するにすぎない。私たちが知りたいのは,「行動がなぜ起こるのか」ということである。なぜ,神経系でそのような活動が起こったのかという疑問が依然として残るのである。(p.20)


・・・好きなお菓子を目の前にして,食べないで我慢する人もいる。なぜか。痩せようと思うからだ。
行動分析学という心理学は,それでは納得しない。食べたいという欲求や,痩せようという意思が生まれる,さらなる原因を考える必要があるからだ。欲求や意思のような心は,行動を生み出す原因ではなく,それ自体が,原因を求められるべき研究対象なのである。科学の用語を使えば,心は行動の原因となる独立変数なのではなく,それ自体,従属変数そのものである。(p.185)

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

*1:ちなみに,行動分析学は経済学とも仲良さげです。だって,アメリカの行動科学革命の洗礼を受けてますからね,経済学は。あーでも,認知心理学との仲の方がいいのかな。

*2:fMRIのことかと。