• 長谷部恭男『憲法学のフロンティア』第1章”リベラル・デモクラシーの基底にあるもの”の要約

定義:
近代立憲主義から導かれる政治体制のあり方を広くさす概念。
特徴:

  1. 人がいかに生きるべきか、世界の意味、人生の意味は何かといった、各人の生の究極にある価値は多様でありしかも相互に比較不能であることを前提とする。比較不能な事柄は相互に換算不能であり、両者の間には共通の価値尺度がそもそもかけている。だからこそ比較不能である。 また、リベラル・デモクラシーは不自然な選択に支えられた人為的な体制であり、放っておけば自然に発生する体制ではない。
  1. 国家を自明の存在とは考えない。国家権力は正当化を要する。国家の正当化根拠は、比較不能な世界観に帰依する人々が、なぜ、それでも共に暮らし、社会生活の便宜を分かち合おうとするかを問うことで明らかとなる。 「調整問題」の策定による便宜(便益)と公共財の供給による便宜(便益)が国家によって提供される。⇒国家なくしては社会生活は維持しえない。

まとめ:
この世には、相互に比較不能なさまざまな考え方が存在する。こうした状況の下で、人々がなお社会生活の便宜を享受するためには、社会の共通の利益について理性的に審議し、決定する場としての公共空間を切り拓かねばならない。
人々は、社会全体の利益が何かを考える際には、人としていかに生きるべきかについての究極の価値を一応括弧に入れ、究極の価値を共有しない他の人々とともに、共通の議論のルールと枠組みに沿って、討議し決定する民主的な政治過程に参与しなければならない。
リベラル・デモクラシーはそうした社会である。